第25章 【過去】ミケニャンニャンの日にて(千石)
千石「あとさ、千石先輩じゃなくって、前みたいにキヨ先輩って呼んでよ」
めいこ「何でですか?」
千石「かわいいから」
めいこ「えっ?」
千石「かわいかったし、嬉しかったから」
少し照れながら笑う先輩のが、かわいいと思う!
めいこは恥ずかしがりながら、頭をポリポリとかいた。
めいこ「じゃ、じゃあ、キヨせんぱ...」
千石「っっっくぅうう!ナニソレナニソレ!可愛いが過ぎる!」
千石は両手の拳を握りしめ、しゃがんで悶ていた。
めいこ「大げさが過ぎる!」
千石「そんなことないでしょっ!...ね、ね、もう一回言って?」
千石は立ち上がると、ゆっくりと近づいてきた。
めいこは彼を見上げながら、今度はあまり恥ずかしがらずにゆっくりと言葉にした。
めいこ「...キヨ、せんぱい」
千石「ん、めいこ」
千石は優しい声で返すと、首を少し傾けた。
突然の呼び捨てと、微笑んだ彼が眩しくて、めいこの耳は熱くなった。
千石「うーんなんつってっ!今の恋人っぽい!」
めいこ「もうびっくりした!」
千石がスタタターッと反対側のコートへ走っていくと、ズボンのポケットから大量にはみ出ている、スマホに付いたキーホルダー達がジャラジャラと鳴っていた。
さっきから気になってたんだけど、何であんなくっつけてるんだろう。
邪魔にならないのかな...。
千石「めいこチャーン!それじゃいくよーっ!」
めいこ「はーい」
千石の打ったボールは優しい弧を描くと、めいこの打ちやすい場所に落ちてきた。
めいこも、見様見真似で打ち返す。
めいこ「っあ」
千石とは全然違うところに飛んでいったが、彼は素早く走ると、また優しいボールを手元に返してくれた。
もしかして、もしかしなくても、ただの素人目だけど、キヨ先輩ってテニス上手い?!
千石「そうそう!じょーずじょーず!ナイスボレー!」
めいこはさっきからアッチャコッチャの玉を打ってしまっているのに、千石は全て丁寧に返してくれた。
その返し玉はどれも打ちやすくて、(打ちやすいのにアッチャコッチャいってしまうが)、まるで自分が上手くなったんじゃないかとさえ思ってしまう。