第23章 【番外】恐怖の麦茶(向日)
ゆゆか「はいはーい、差し入れでーす」
大きなタッパーを持った友人が、ベンチに置いて蓋を開けると、甘酸っぱい匂いが立ち込めた。
中にはヒタヒタに浸かった、スライスされたレモンが入っており、ミントの葉が彩りを添えている。
ゆゆか「じゃーん、砂糖漬け塩レモン」
芥川「おおーっ!うまそー!いっただきー!」
芥川は横についた楊枝で器用に指すと、1番に口に持っていった。
めいこ「すっごい量!」
ゆゆか「頑張った」
友人は親指を立てて、得意げに言った。
ゆゆか「漫画とかの差し入れでさ、よくあんじゃん。やるの夢だったから」
めいこ「そうなの?あたし初めてみた」
芥川「うめー!」
ゆゆか「喜んでもらえてよかったッス」
向日「和栗、お前も見習えよ」
めいこ「うえーい」
しょっぱい麦茶片手に塩レモンという、プチ立食パーティみたいになっているところへ、跡部と滝がゆっくりこちらに歩いてきた。
滝「フーッ、...やっぱ、景吾くんとやると、身がもたないよ...」
息切れながら喋る滝は、額に流れる汗をタオルで拭く。
跡部「差し入れか、気が利くじゃねーの」
ゆゆか「あざーっす」
跡部はリストバンドで汗を拭いながら、背後からめいこが持っているグラスを横取った。
めいこ「あ」
何口か飲むとククククッと笑い出し、滝も笑いながら飲んだ。
めいこ「....塩入れ過ぎたんですぅー」
罰が悪そうにめいこは口を尖らせる。
跡部「お前らしいな」
滝「ありがとう、気持ちがこもってておいしいよ」
めいこ「滝さぁん!」
滝の心優しいフォローに、感激するめいこであった。
ゆゆか「部長ー、塩レモンよければどーぞ」
跡部「あぁ、ありがとう。俺はいいから、樺地にやってくれ」
ゆゆか「ウッス」
友人が跡部の後ろにいた樺地に差し出すと、小さな声で「ありがとう、ございます」と言っていた。
跡部「塩はもう少し加減するとして、たまにはいいじゃねーの、こういうのも」
めいこ「....」
それから各々差し入れの礼を述べると、グラウンドへ戻っていった。
めいこは空いたグラスをお盆に集めると、少し気を落として流し場へ運ぶ。