第22章 夏の職業体験!(跡部)
目の前のテーブルには、御茶の入った湯呑と、少量のお菓子が並んでいた。
めいこ「食べてもいいのかな...」
お茶を1口飲んでから、遠慮がちに小さいものを1つつまんだ。
お庭、綺麗だなー。あの花、何ていうのかな。
小さな窓からは、少しだけ庭が見える。
耳をすませると、向こうの方から石畳を走ってくる音が聞こえた。
めいこ「え"っ!」
なんとこちらにやって来たのは家の住人、跡部景吾。
めいこ「何でこんな広いのによりにもよって〜!」
めいこが慌てて机の下に隠れると、窓から跡部の頭が通り過ぎるのが見えた。
あ、窓小さいから隠れる必要も無かったか。
直ぐに机の下から出て窓を覗くと、ランニングウェアを着た跡部の背中が見えた。
もしかして、朝練でお庭走ってるのかな。
めいこ「ぶちょー、がんばってー」
小声でこっそりエールを送ると、めいこは席に座り直した。
跡部「...ん?」
背後の視線が気になり、後ろを振り返った跡部であった。
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めいこ「かっかわいーっ!」
めいこは先程、丈揚げをしてもらった、Aラインのメイド服に身を包んだ。
白いエプロンにカチューシャ、それからソックス。
靴は黒の革靴。
クルクル回ると、たっぷりとしたドレープが揺れた。
メイド服は全員黒なのだが、職業体験のめいこは同業者に分かりやすいよう、うっすらと紺色であった。
けれど太陽の光が強く当たらない限り、黒とたいして変わらないので、本当に分かりやすいのかは疑問である。
「まずは、お皿洗いからお願いしようかしら」
めいこ「はいっ!」
メイド長さんにキッチンを案内されながら、流し台に付いた。
そのホテルのように大きいキッチンは、メインのシェフが指示を出し、大勢の人が忙しなく働いているのだった。
よーし!すごい数のお皿、ピカピカに洗ったろうじゃないですか!
「下洗いできたものがここに積まれているから、この食器洗い機に入れてもらえる?」
めいこ「え?あ、はい」
どでかい業務用食洗機を前に、若干拍子抜けしためいこメイドであった。
「あれ、もしかして君が和栗さんですか?」
めいこ「え?」
先程皆に指示を出していた料理長らしき人が、声をかけてくれた。