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【テニプリ】まずは友達から

第21章 【パラレル】豹のお兄さん(黒羽)


黒羽「なワケあるかっ!俺の大事なお客さんだぞ!」

天根の胸元に、スナップの効いた手の甲チョップが入った。

天根「グフッ!相変わらずのキレ」

黒羽「嬉しくねーよ。和栗さん、行こーぜ」

黒羽はポケットに手を突っ込むと、ドアを開けて先に出ていってしまった。

めいこ「え?!えっと、お世話になりました」

慌てて後を追いかけるめいこに、受付の看護師と天根は、「お大事に〜」と優しく手を振ってくれた。

めいこ「あの!待ってください!帰りの分のお金、足りるかどうか分かんないんですけど!」

黒羽は唇の下を少しかきながらドアを開ける。

黒羽「あー、いや、いいよ。今昼休憩中だし」

めいこ「え?」

キーを差し込むと、料金メーターの電源を切った。

黒羽「前座わんな、リクライニングする方が楽だろ」

めいこ「え、や、でも、骨折じゃなかったし...」

というかどっちか分かんなかったし...。

黒羽「そんだけグルグルじゃ骨折と変わんねーだろ。ホラ、乗った乗った。別に取って食いやしねーよ」

取って、食う?!
それじゃホントに豹じゃないか。

めいこは押しに負けて、ゆっくりと助手席に座った。

黒羽「学校に送ればいいか?」

めいこ「あ、いえ、早退してきました」

黒羽「あー、じゃあ、昼は?」

めいこ「まだです」

黒羽「よし、んじゃあとっておきのとこ連れてってやるよ」

めいこはまた口がポカンと空いてしまった。

この人は、なんたってこんな初対面の中学生に、こうもよくしてくれるのだろうか。

エンジンをかけて、背もたれに肘をついて後ろを振り返りながら、片手で操作している。
さっきよりも間近に見える、自分の親とは違うハンドルさばき。
時々、手のグローブとハンドルが、スルスルと擦れる音。
車の免許を取れる歳になるのは、まだまだ遠いことのように思うめいこにとって、それだけでも大人なんだと実感してドキドキした。
ほどなくして、タクシーは陽炎がみえる暑いアスファルトを走り出す。

黒羽「窓開けていいか?」

めいこ「あ、はい」

両側の窓が下に降りると、ブワっと風が入ってきた。
鼻に溜まる、このしょっぱい匂い。

海の匂いだ。
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