第21章 【パラレル】豹のお兄さん(黒羽)
めいこ「いやー、ちょっとさっき跳び箱で派手にコケたときに右手ついちゃって、グキッっと。ははっ」
黒羽「あー、そりゃいてぇなぁ。なら助手席座った方が良かったか?リクライニングできるしよ」
めいこ「いやいや、大丈夫ですよ、こんくらい」
っていうか今更移動すんのめんどくさいし。
黒羽「そうか?けど、若い頃の怪我は甘く見ない方がいいかんな」
めいこ「はぁ」
黒羽「俺はテニスやってたんだけどよぉ、無理がたたって今じゃただのタクシー運転手だぜ、ははっ!ま、慣れてなくて未だに道間違うんだけどなー」
だ、だから遅かったのかな。
カッチカッチカッチという音で曲がるタクシーに揺られ、めいこは何気なく車内を見渡した。
座席はよく見る白のカバーで覆われていて、でも何故か背もたれに豹の刺繍が施されていた。
足元にはビニールカバーがしてあるが、それも豹柄。運転席のベルトカバーも、豹柄。
ハンドルカバーは、赤。
派手。ハッデ。
これ、仕事の楽しみの1つにしてるのかな。
ハンドルを持つ手は黒のグローブをしていて、自分の腕とはまるで違う、その筋張って日焼けした肌に、少しドキドキした。
黒羽「着いたぞー」
めいこ「あ、はい、ありがとうございました」
料金メーターをみると、1000円を超えていた。
やっぱりタクシーは高い。
先生からもらった2000円を、片手だけ使って財布から抜き出そうとすると、やんわりと止められた。
黒羽「いーって、俺とダビデの馴染みってことで」
めいこ「え、あの...」
あたしはそのダビデ先生の馴染みって訳じゃないんだけど...。
初診だし。
黒羽「んーさすがに社長に怒られっかな。じゃあ、1000円ポッキリにまけとくぜ」
めいこ「え?いいんですか?じゃあ...」
黒羽「まいどありー!」
黒羽はニカっと笑って1000円を受け取ると、ドア開閉ボタンを押した。
めいこ「ありがとうございました」
不安そうに降りためいこに、黒羽は「あ、そうそう」と付け足す。
黒羽「ダビデつってもゴリゴリの日本人だかんな、心配すんなよ!」
めいこ「えっ」
黒羽「バネさんがヨロシク言ってたって伝えといてもらえるかー」
めいこ「は、はぁ」
黒羽「んじゃなー!」