第20章 【番外】屋上の茶番劇(向日/跡部)
向日はドアに耳を当ててみるが、しばらくすると首をふった。
向日「駄目だ、さっきより離れたんだろ。何言ってるか聞き取れねーよ」
跡部「なら、開けて確かめるまでだ」
跡部は録画をスタートさせると、ゆっくりと鍵を回し、気づかれないよう慎重にドアを開けた。
少し先に、めいこが背を向けて立っている。
向日「和栗...」
駆け寄ろうかためらっていると、突然めいこが叫んだ。
めいこ「オホホホ!お仕置きザマス!」
ゆゆか「それ違ぇーだろ」
すかさず隣にいた生徒にツッコミを入れられている。
めいこ「だって言ってみたかったんだもん!えーっと、この雌猫!」
ゆゆか「それも言いたかっただけだろ」
「ひえー!ご勘弁をお岱鋼様ぁああ!」
ゆゆか「時代劇になってんぞ」
めいこは叩く真似をして、眼鏡をかけた生徒は、アヒル座りで泣き真似をしている。
向日「なに、やってんだ...?」
跡部「ジーザス」
跡部は呆然と録画を停止した。
その音で初めて向日達に気がつく3人。
めいこ「うえっ!ぶっちょー!」
ゆゆか「あははは!」
「キャーッ!跡部様ぁああ!」
それぞれ驚き、爆笑、赤面という表情に変わった。
向日「和栗、まさかお前がいじめる方だとは思わなかったぜ」
めいこ「ちがっ!誤解!」
跡部「どういうことか説明してもらおうじゃねーの」
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向日「あーつまりこういうことか?眼鏡かけてるソイツが、小説を書くネタの参考にしたくて、いじめ現場を再現して欲しかったから、和栗達にその役を頼んだと」
「はい、そうです、お騒がせしてすいません〜」
眼鏡を押さえながらペコペコと謝る友人。
向日「ところで参考になったのか?」
「いや全然。ゆゆか以外は」
真顔で手をブンブンと降って、否定の意を示した。
めいこ「何でだよ!」
向日「和栗向いてねーんじゃねーか?そういうの。お嬢じゃなくてザマスになってたしよ」
めいこの肩をポンポンと叩くと、納得いかんとばかりの表情になる。
フェンスに寄りかかり黙って聞いていた跡部は、「...いや」と切り出した。