第20章 【番外】屋上の茶番劇(向日/跡部)
「あなた、ちょっと跡部様に気に入られたからって図に乗り過ぎなんじゃない?」
「そんなぁー!私は普通に学校生活を送っているだけですぅうう!」
そんなやり取りが、屋上へ続くドアの前から聞こえてくる。
昼休み中、久しぶりに屋上で寝ようかと思っていた向日は、たまたまそんな場面に鉢合わせてしまった。
向日「あーまいったなー」
面倒だなと頬をかく。
自分が止めるべきか、跡部か先生にチクるべきか、はたまたスルーして別の場所へ行くか。
向日はしばらく、階段を登ったり降りたりした。
「和栗も何とか言いなさいよ!」
向日「は?」
その名前を聞いた途端、迷わずドアに手をかけた。
向日「あ、くそっ、開かねーっ!」
ガチャガチャと音がなるだけでびくともしない。
どうやら外から鍵をかけられているらしい。
「やばっ!」
「うわびっくりした!」
それを聞いたドアの向こうにいる生徒は、少し焦った様子を見せた。
しかしここで粘っていたって仕方無い。
向日は踵を返して走り出した。
その頃跡部は、生徒会室で食後のティータイム中であった。
跡部「この調合、中々味わい深い。なぁ、樺地?」
樺地「ウス」
そこへノックもせず、向日が勢いよく扉を開けた。
向日「おい跡部!」
跡部「何だ騒々しい」
向日「屋上の鍵貸してくれ!和栗がいじめ集団に捕まってんだよ!」
跡部「和栗?」
ピクリと片方の眉を上げると、静かにティーカップをテーブルに置いた。
跡部「樺地、悪いがティータイムはお預けだ」
樺地「ウス」
跡部は横の壁にかかっている無数の鍵の中から1つを手に取った。
跡部「他の生徒は使用出来ない決まりになってる。俺が行こう」
鍵のリングを指に引っ掛け、クルクルと回しながら生徒会室を後にする。
向日「待てよ、俺も行く!」
自分が鍵を取りに行ってる間に、ひどい目に合ってやしないかと、内心ハラハラする向日だった。ーーー
ーーー「...!」
屋上からは、まだ何か言い争っているような声が聞こえてくる。
しかし、跡部は鍵ではなくスマホを出した。
向日「おい、早く開けてくれよ」
跡部「まぁ待て、こういうのは現行犯逮捕に限る」
向日「は?」
跡部「音声と映像を残して上に報告する。これで2度とそういうマネはできねぇだろ」
向日「おっかねー」