第17章 恐怖か恋のドキドキか(忍足/跡部)
めいこ「なんか自爆した気がする」
妙に納得した顔で頷く忍足とは反対に、めいこは不服の表情を浮かべた。
夕飯を食べ終わると、2人はめいこの家へ向かった。
めいこ「はぁー、おなかいっぱい」
忍足「せやなぁ」
行き交う車が幾分少なくなった道を歩けば、直ぐにめいこの自宅がみえてくる。
めいこ「今日はありがとうございました、試合の後なのにこんな遅くまで」
もう空はすっかり薄暗くなっており、マンションの明かりもちらほらとついていた。
忍足「かまへんよ、いい気分転換やったわ。こっちこそありがとうな」
自宅下まで来ると、めいこはハタと嫌な事を思い出す。
めいこ「あの、先輩」
忍足「ん?」
めいこ「家にお化け、出ませんよね?」
めいこは不安に揺れる瞳で忍足を見上げる。
忍足「出ぇへん出ぇへん」
忍足は少々困った顔で、ワシワシとめいこの頭を撫でた。
めいこ「うぐ」
忍足「これで、ほな俺が泊まって番したろか。ってなったら、跡部始め皆めっちゃ怒りそうやんか。送り狼になるのはごめんやで」
めいこ「え?」
いつもより若干早口気味になった忍足は、まるで自分に言い聞かせているようだ。
忍足「なんなら電気全部付けて、テレビつけて音楽もつけてやかましくしときぃ」
めいこ「なるほどー!」
めいこは手の平を拳でポンと叩いてガッテンした。
忍足「自分が家入るまでここで見とくから安心して帰り」
めいこ「先輩めっちゃいい人...!」
忍足「ははは」
忍足はまた少し困ったような顔をする。
めいこ「なんか、なんかお礼したいのですが」
忍足はとうとうビシッと固まってしまった。
忍足「あー...アカン、もう駄目や」
めいこ「へ?」
忍足はめいこの肩を抱くと、額に優しくキスした。
めいこ「どわ?!」
忍足「お礼はこれで、いいで」
そう言うと、頬が赤くなっためいこから離れた。
忍足「ほなな」
手を振る忍足に、めいこは額に手を当てながら会釈すると、急いで家に入っていった。
忍足「おあいこやで、跡部」
ポツリとそう呟くと、忍足は帰り道を歩き出した。