第17章 恐怖か恋のドキドキか(忍足/跡部)
忍足「ほん」
めいこ「ホラー映画観た後、家に1人ってどないやねん!」
めいこは近くの電柱に片手をついて嘆いた。
忍足「そら、えらいこっちゃなぁ」
めいこ「はぁ、どうしよう」
忍足「そないに不安なら、家まで送ったろか?」
思いもよらない返答に、めいこは一瞬キョトっとした。
めいこ「え?...あ、そういう意味で言ったんじゃないです!ってか、さすがにそれは悪いですよ。先輩の家、あたしん家と結構離れてますよね?親御さん心配しますよー」
忍足「それなら大丈夫や。何処行くんか連絡入れとけば、後はわりと緩いねん」
めいこ「はぁー、大人っぽい人うらやますぃー」
めいこは口を尖らせて、小さな小石を蹴った。
忍足「なんや腹も減ってきたし、この際一緒に夕飯すんのはどうや?」
めいこ「え!?一緒に、夕飯!?先輩と夕飯!」
めいこは目を輝かせて前のめりになっている。
こういう青春っぽいシチュエーションに弱いのであった。
忍足「決まりやな」
そんな様子を見た忍足は、そのまま駅の改札を通った。
夕方のラッシュ。
電車は直ぐに来て、2人は特に何も話さずに椅子に座る。
忍足は今日の試合のこと、めいこは、朝からの出来事をぼんやり思い出していた。
タタン、タタン。
疲れ切ったときに、ボーッと身を任せて乗る、電車の揺れは気持ちがいいもの。
めいこはいつの間にか目をつぶり、忍足の肩下あたりにもたれていた。
忍足「かわええなぁ...おつかれさん」
忍足は暖かい眼差しをめいこに向けると、自分も目を閉じたのだった。
忍足「...和栗、和栗チャン」
もう直ぐで降りる駅なのだが、彼女の肩を叩いても「んー?」とまだ寝ぼけている。
しゃーないなと、他から見えないよう耳を甘噛みした。
めいこ「っんふぁ?!」
案の定、めいこは弾かれたように起き上がった。
丁度駅に付き、ドアが開く。
忍足「降りよか」
めいこ「う?ん??」
耳をさすりながらキョロキョロと辺りを見渡し、まだうつろな目をしためいこの手を引いて降りた。
忍足「ところでお嬢ちゃん、近くにファミレスみたいなとこあるんか?」
めいこ「あーうーん、ワックかな」