第17章 恐怖か恋のドキドキか(忍足/跡部)
めいこ「忍足先輩ぃいー!一緒に帰ってもいいですかぁあー!」
バス停にまだ居た忍足は、こちらを向きながら口元を抑えてククッと笑っている。
忍足「そうなるやろなと思うたわ」
めいこ「え!」
忍足「ほな送ろか」
そう言うと、忍足はめいこの最寄り駅に向かって歩き出した。
その後ろに慌てて付いていく。
めいこ「え?!いいんですか?もうバスで超遠回りして帰る覚悟だったのですが..」
忍足「冗談や。こないに暗い道、可愛いお嬢ちゃん1人で歩かせる訳ないやんか」
めいこ「あああありがとうございます」
忍足「それにな、そんなんしたら跡部や日吉に後で何されるか分からんで」
めいこ「はぁ、それは幽霊ばりに嫌ですな」
めいこは手の指を組んで、ソワソワと動かしていた。
忍足「手ぇ、繋ごか?」
めいこ「へっ」
返答は待たず、忍足はめいこの左手を優しく掴んだ。
忍足「何や、華奢な手やな」
めいこ「そっそうですか?」
大きな手に少しドキドキしたが、それよりも安心感の方が強かった。
さっきまで恐ろしかったこの暗い道なんか、どうってことない。
なるほど!
やっぱこいう時に彼氏がいたら心強いんだな!
他愛もない話をして、もう直ぐで駅に着くというとき、めいこの携帯から聞き慣れない着信が流れ出した。
それは、先程ホラー映画で出てきた呪いの着信音。
めいこ「ギャワーー!」
めいこは数センチ飛び上がった。
忍足「ンハハハ!ちょ、落ち着き、取り合えず出ぇや」
慌てて鞄から取り出すと、めいこの母であった。
めいこ「もしもし?」
しばらく話した後、めいこは落胆した様子で電話を切った。
めいこ「はぁ」
忍足「何や、誰かに携帯貸したりしたんか?」
めいこ「そういや桃城君が、さっき今時持ってるガラケー珍しがってちょっと貸してって」
忍足「そん時イタズラされたみたいやなぁ、可哀想に」
めいこ「くぅう!桃チャン先輩君め!」
忍足「くっつけ過ぎやろ」
めいこ「いやそれよりもですよ、聞いてくださいよ」
忍足「どないしたん」
めいこ「うちの親、宿泊チケットが当たったからって、今日家に居ないらしいんです」