第14章 気分転換しましょう(跡部/不二)
日吉「チビ、それは俺のことじゃねーだろうな?」
越前はちょっとムッとした日吉をスルーして、テニスバックを持ち上げる。
跡部「ったく、仕方ねーな」
跡部が席を立ったところで館内のドアが締まり、照明は薄暗くなった。
一気に不安になっためいこは、とっさに越前の腕を掴む。
越前「ん、なに」
めいこ「あああのさその帽子貸してくれません?」
越前「なんで?」
めいこ「なんかこう、構えとけば霊の盾になるかなーって!アハハ!」
越前「変なヤツ。こんなの汗臭いだけだよ」
めいこ「気にしないよ!...ってごめん、言ってみただけー」
初対面に近い人に何頼んでんだろうと、慌てて引き下がる。
越前「別にいーけどさ」
めいこ「えっ?!いいの?!」
帽子をめいこに放り投げると、跡部と入れ違いに前の席に移動した。
めいこ「あ、ありがとう」
ブーッとブザーが鳴り、いよいよ館内は暗くなる。
不二「寒くない?」
冷房のきいた空間に、ジャージの半ズボンでいるめいこを気遣って、不二が自分の上着を膝にかけてくれた。
めいこ「わ、ジェントルマンですね」
不二「ほら、姉がこういう時によく寒がるから君もかなと思ってね」
めいこ「なるほどー、ありがとうございます」
シュルっと布の擦れる音がして、跡部が右横に座った気配がした。
めいこは背もたれに寄っかかる時に当たらないよう、軽く結んでいた髪を解く。
間もなくして映画注意事項が流れ始めたと思ったら、自分の背もたれに跡部が腕を回してきた。
はいっ?!何?!
跡部の横顔はめいこに触れそうなくらい近い。
とっさに下を向くと右腕が伸びてきて、めいこの左側にあるドリンクホルダーに、そっと飲み物をセットしてくれた。
な、なんだびっくりした...。
跡部「飲んでいいからな」
めいこ「あ、あざーす」
安心して顔をあげると、暗闇の中で一瞬不敵に笑う跡部がみえた。
チュッ
めいこ「ーーーーーーっっ!!」
唇に軽くキスされ、声にならない叫びを上げて睨みつけると、何事も無かったかのようにポーカーフェイスで正面に向き直る跡部。
他の人達は予告の映像と音に気を取られて全く気づいていないようだった。