第9章 肉を切らせて骨を断つ
「……最初ですし、ぐるっと廊下を一周でもし」
「紗都先生!」
目を落とすと、サヘルくんは床を見つめながら震えていた。
「やっぱりっ、ぼく……こんなこと」
わたしは黙ってその姿を見下ろし、脚を上げた。
「あンっ!」
サヘルくんの手の甲を踏みつける。
「やってください、じゃないんですよ」
グリグリと踏み込むと、サヘルくんは悶えた。
「ひ、う……!あ、あ、っ!」
わたしは冷酷な目を向け、静かに見下す。
「やらせてあげますって言ってるんです」
「っひ……ぁ」
サヘルくんはふるふると身を揺らし、身体を丸めさせている。
わたしは無表情に呟いた。
「……だから別にやりたくないならいいです、これで終わりにしましょ」
わたしは足先を離し、すっとしゃがみ込んだ。
首輪に手をかけると、サヘルくんが振り払った。
泣き声をあげ、首を激しく横に振る。
「ちが、違いますっ」
「……何がですか?わたしも意地悪言い過ぎました、もうやめましょう」
「違うんですッ、ぼく、変態だからっ……、紗都先生にこういうことされると、う、嬉しいんです」
「…………」
「で、でも、こんなことしてるの人に見られたら、紗都先生が……」
サヘルくんの言いたい事を理解した。
「そうですね……ありがとうございます」
わたしはサヘルくんの背中を軽く撫で、踏みつけた手の甲に触れた。
細く白い肌が赤くなっている。
「痛くないですか?」
サヘルくんはわたしの問いかけにはにかんだ。
「ちょっとだけ……でも、ぼくはそれが嬉しいんです……」