第8章 待てば海路の日和あり
拍子抜けしたように固まる時雨先生を置き、わたしは話を進める。
「あんな可愛いこと言われたら、ちょっとやる気になっちゃいます」
時雨先生の顔が引き攣る。
視線の先には、
「わたし、これ誰に使おうか迷ってたんですけど」
わたしの手にした小さな性玩具。
「買って良かったです」
男性器を拘束し、射精の自由を奪う貞操帯。
「時雨先生……欲しかったんですよね、わたしのモノだって証が」
時雨先生の言葉を思い返し、薄ら笑う。
『俺……丸木戸がいないとふあん、だから……俺を縛ってくれる、証が……欲しい』
わたしは時雨先生の耳元に囁いた。
「これで毎日感じられますよね、もう不安にならないように」
「あ……」
時雨先生がわたしを見つめる。
恥しそうな、でも恍惚とした、被虐的な悦楽に溺れる瞳。
堪らなく色っぽくて、心臓がドキドキする。
「嫌ですか?」
時雨先生は首を振った。
「俺は、丸木戸のモノだから……なんでもお前の言うこと聞かせてくれ」
わたしはにこっと笑った。