第2章 窮鼠猫を噛む
「なんで敬語なの、紗都ちゃん」
「そっちこそ……タメ口、使わないでください、わたしは先生です……ちゃんと先生、って呼びなさい」
わたしは必死に、一つずつ、言葉を絞り出す。
そして、永夢くんをきっと睨んだ。
わたしの言葉は、軽く聞き流され
「声震えてんじゃん、せんせー」
永夢くんがわたしの耳に息を吹きかけた。
耳朶に温い吐息がかかり、身悶えた。
「あッ……」
嬌声が漏れた。
足先が切なげにシーツの上を動く。
永夢くんは満足気に微笑する。
「かーわい」
力の抜けたわたしの瞳を見つめる。
わたしがぼんやりと見つめ返すと、永夢くんはニッコリと笑い、
「紗都ちゃん、マジ可愛い」
わたしの両手を取り、
「……えっ」
何かを巻き付けた。
手元を見ると、両方の親指が結束バンドで拘束されていた。
開いた口が塞がらない。
信じられない、と永夢くんを見ると、
「オレ紗都ちゃんみたいな子めっちゃタイプなんだよねー」
舌なめずりをしていた。