第2章 窮鼠猫を噛む
「ほらー、もう起きる時間だよ」
カーテンを開く。
永夢くんと目が合った。
寝起きだからか、表情が薄く、目つきは虚ろだ。
半開きの口元が妙に色っぽくて、少しだけビクッとする。
「なんだ、もう起きて……」
その時、永夢くんが真っ直ぐに腕を伸ばし、
「わっ!?」
わたしの手首を掴んだ。
そのまま、 わたしは転がり込むようにベッドの上に倒された。
わたしは状況把握が出来ないまま、上半身を起こす。
「いっ、た……なに?ど、どうしたの?」
目の前の永夢くんはわたしの問いかけに答えないまま、もう一度、わたしの手首を片手で掴んだ。
そして、もう片方の手で、カーテンを閉じた。
永夢くんはわたしを壁際に詰めるように、ゆっくりと距離を縮める。
そして、怯えた顔のわたしに耳元で囁いた。
「……おはよ?」
永夢くんは、わたしを睨めつけるような、蠱惑的な目付きで笑っていた。
わたしの肩がビクンと跳ねる。
ヤバい、なんか……
「おは、ようございます……」
怖い、かもしれない。