第6章 魚心あれば水心
サヘルくんはぎゅうっと自分の制服を掴む。
「ほんとう、に、ごめんなさいっ……ぼく、紗都先生の、す……ストッキング、を……」
「ストッキング?」
わたしが首を捻ると、サヘルくんは弱々しく頷く。
サヘルくんはもじもじと話出した。
「紗都先生が、今日途中で席を外したじゃないですか」
「うん……」
そこで伝染したパンストを捨てたことを思い出した。
「その時、最初履いてたストッキングを帰ってきた時には脱いでて、そして手にも持ってなかった」
訥々と語るサヘルくん。
顕になった片目の眼力が強まる。
「それで、もしかしたら女子トイレに捨てたのかなっ、て」
「そ、そうだけど、じゃあもしかして今持ってるの?」
サヘルくんがこくんと首を振る。
「出してくれますか……?」
サヘルくんは躊躇いがちに学生鞄に手を突っ込み、ストッキングを取り出した。
机の上に置かれたてろてろとした薄ベージュの布。
紛れもなくわたしの脱ぎ捨てたパンストだ。
かあっと赤面し、居心地悪そうに俯いているサヘルくん。
わたしはサヘルくんの目の前に指先でストッキングを摘み上げた。
「これ、どうするつもりだったんですか?」
「……そ、それ、はっ……」
サヘルくんは目線を泳がせる。
「教えてくれますよね」
意地悪く笑うと、サヘルくんはぼそぼそと釈明した。
「その、紗都先生のっストッキングを使って、お、オナニー……する、つもり、でしたっ……ごめんなさいっ……」
含羞に頬を染め上げる。