第37章 酒は詩を釣る色を釣る
「よくやるぜ、アイツらも丸木戸も……」
静かにボヤくと、丸木戸が苦笑する。
「それは時雨先生も同じでしょう?」
腰を上げてゆっくりと歩き出す。
俺の前に立って顔を見下ろした。
「あ……」
図らずも俺の瞳がびくっと動く。
丸木戸を見上げると、何もかも見透かされたように微笑まれた。
「こんな大掛かりなことに協力しちゃって……」
バツが悪く歪な笑みで返し
「……まあヤバいな……俺、ただでさえ勤務態度悪いし」
肩を揺らすも、丸木戸は微笑を浮かべたまま首を軽く左右する。
「そんなことないですよ。それに、わたし達お互い様でしょう」
そう言い残し、俺に背を向けた。
「行ってきますね」
入れ替わるようにして歩き出す。
保健室のドアに手をかけ、こちらを振り返った。
丸木戸が俺の目を真っ直ぐに見る。
「ご褒美、期待してますか」
喉が鳴る。
俺が頷くと、丸木戸は何も言わずに目を細めて
「考えておきますね」
保健室を後にした。