第37章 酒は詩を釣る色を釣る
紗都せんせいの名前を口に出せばその人の動きが一瞬止まり、ボクも固まってしまう。
【もしもし……そろそろ人が来たと思うんですけど、その人の誘導に任せて歩いて下さい】
「はっ……はい、分かりました……」
ヘッドホンからの指示があれば無理に自分を安心させ、コクコクと頷く。
身体をその人に預けた。
導かれるがままに恐る恐る歩き出す。
恐らくダンスレッスンルームのドアが開いて、部屋に通された。
手も離れ、ボクはおずおずと次の指示を待つ。
……もしかして紗都せんせいが見てるのかな。
身動ぎして、頬を熱くする。
何をされるんだろう、いや、何をしてくれるんだろう……。
✱
「えっ」
オレは思わず声を洩らす。
今、紗都せんせー全部脱いでって言ったよね。
ヘッドホンから聞こえてくる紗都せんせーの指示は自分の耳を疑うようなものだったけど、
「……うん、分かった」
オレは逸る鼓動を抑えながら、制服に手をかけた。