第37章 酒は詩を釣る色を釣る
当日、言われた通りにダンスレッスンルームに向かう。
紗都せんせいの指示に従いボクは予め受け取っていた目隠しとヘッドホンを着けた。
しっかりした大きめのアイマスクと遮音性の高そうなヘッドホン。
両方を装着すれば視覚と聴覚が奪われた状態でその場に立ち竦んでいると、
【サヘルくん?そのままそこにいて待ってて下さいね。これから指示はこのヘッドホンから伝えます】
「は、はい!」
両耳に流れた紗都せんせいの声に勇んで返事をする。
高鳴る心臓を押さえて指示を待っていると、誰かに手を取られた。
身体がビクッと大きく跳ねる。
「あっ、あの、紗都せんせい、で……」
思わず縋るように目隠しした顔をその人に向け尋ねるが、その手は明らかに紗都せんせいとは違う事に気が付いた。
大きいけれど細身な角張った手、男の人の手……。
「ッ……!」