第37章 酒は詩を釣る色を釣る
「あの、時雨先生、わたしに協力してくれませんか?」
「……は?」
時雨先生は不機嫌そうに眉を顰める。
わたしは強ばった表情を浮かべ、もう一度口を開いた。
「ですから、時雨先生にちょっとしたご協力を仰ぎたく……」
語尾を濁してへらへらと笑っていると、
「主語がねえんだけど」
頬をむにっと摘まれた。
時雨先生は無表情に何度も指先で弄る。
「いたいいたぃいたぃ……」
頬を触られまくりながら、わたしは時雨先生を見る。
「今から言いますから……それで、聞いてくれるんですね……」
「うん」
「……あと離してください……」
わたしは時雨先生に全容を説明し、ようやく解放された。
わたしは触られたせいで落ち着かない頬を揉みほぐしながら、時雨先生の様子を窺う。