• テキストサイズ

男子校の女王様。

第36章 子の心親知らず


サヘルくんは慌てた様子で子供の手を引く。

「こらっ、こんばんはでしょ。あと、指指さないの」

サヘルくんのお兄ちゃんらしい姿に目を細める。

「みんなでお買い物ですか?」

「はい……その、学校が終わって、弟たちを迎えに行って、そのまま来たんです。家に残しておくのは心配だし、時間もないし」

わたしは感嘆の声を上げる。

「そうなんですね……!偉いですね、サヘルくん」

サヘルくんはぽっと頬を赤らめ、俯いて首を左右に振る。

「い、いえそんなっ、ボクは……ただ、歳が一番上だからってだけで……親も頼れない、し……」

表情を僅かに曇らせ、困ったように笑った。

わたしは首を横に振って否定する。

「それでも偉いですよ、なかなか出来ることじゃないです」

「そんな、ボクは……っ」

その時サヘルくんの目線が下に行く。

小さな女の子が暇そうにサヘルくんの腕を引っ張っていた。

わたしはぷっと吹き出す。

「ごめんなさい、お買い物中に引き止めちゃって。また明日」

「い、いえ、こちらこそ……それじゃあ、失礼します」

ばいばい、とサヘルくんたちに手を振って歩き出す。

サヘルくんの陰った表情と声を思い出すと、知らず知らずのうちに口を固く引き結んでいた。

/ 575ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp