第35章 商人の嘘は神もお許し
永夢くんは嬉しそうに身を揺らすも、時雨先生は表情を強ばらせる。
永夢くんの目隠しを上向きに持ち上げる。
解放すると、永夢くんは眩しそうに瞬きをし、わたしと目を合わせた。
ぱあっと表情を輝かせ、
「紗都ちゃ……」
目線がぎょっとしたように逸れる。
時雨先生を視界に捕え、
「だ、誰ッ……!?」
短く叫ぶ。
拘束具をカチャッカチャッと揺らし、わたしに懸命に問いかける。
「えっ、嘘ッ、待って!紗都ちゃんっ、誰なのその人っ!」
わたしは声のトーンを少し落とし、身を捩って抵抗する永夢くんを宥める。
「落ち着いてください、わたしに付き合っている人がいるのは知ってますよね?」
そう話しかけると、永夢くんは時雨先生を気にしながらもこくんと頷いた。
「う、うん……遊んであげてるんだよね」
「はい。そしてそれは永夢くんも同じなんです」
にこっと目を細めると、永夢くんは口を噤んだ。