第33章 水に燃え立つ蛍
永夢くんは戸惑いがちに視線を逸らし、
「……紗都せんせー、今、悪いこと考えてるでしょ……」
ボソッと呟く。
「わたしは永夢くんのお手伝いをしてあげたいなあって思ってるだけですよ」
永夢くんは釈然としないような顔で、口元を隠す。
「う~……ずるい……」
「どうします?」
永夢くんはゆっくりと身を起こし、わたしの目線に高さを合わせる。
熱っぽい目で、小さく口を開いた。
「ん……して、我慢できないオレのこと、紗都せんせーに鍛えて欲しい……」
✱
わたしは回想を終え、目の前の永夢くんを改めて見つめる。
興奮から荒い息遣いになりながら、床の上に膝を突いている。
永夢くんの滑らかな手首は結束バンドでひとまとめに拘束され、手を使うことがままならない状態だ。
「なんだか懐かしいですね」
わたしの口を衝いた言葉に永夢くんはぼっと頬を赤くし、そろそろと自身の両手を胸の前まで持ち上げてみせた。
制服の袖口から露出した肌を縛る無機質なプラスチック。
痛ましさすら混じった背徳的な格好に、永夢くんは色欲を募らせているようだ。
伏し目がちに吐息を衝き、首を縦に振った。