第33章 水に燃え立つ蛍
永夢くんはこの学園が嫌い、というか、興味が持てないんだろうけど。
わたしをきっかけに毎日来てくれるようになった。
元々学園に行かない、行けない理由なんてない子だったから。
頭の回転が速い、運動ができる、絵にかいたような人気者の永夢くんを学園が拒むはずはない。
当り前のように受け入れられ、求められ、本人も自然な顔をして溶け込んでいく。
「永夢くんはなんでもそつがないですね」
わたしは小さく吐露した。
永夢くんは軽く首を傾げ、なんでもなさそうに言う。
「結構そうかも」
さらっと吐かれた一言には淀みも嫌味も全くない。
永夢くんの裏打ちされた自信がありありと伝わってきて、溜息が漏れた。
「……羨ましい限りです」
恨みがましいわたしの声に永夢くんは慌てて付け加える。
「あれっ!そんなつもりじゃないってー、オレめっちゃ普通だよ?」