第32章 妬みはその身の仇
時雨先生はわたしから目線を外し、ぽつりと吐露する。
「俺が子供じみてた、つーか気持ち悪い……」
わたしは返事に悩み、俯いた。
「……そんなことはない、ですけど、今は、まだ……」
「それに、俺もまだ……いや、何も」
わたしは時雨先生の言葉に眉間に皺を刻んだ。
ばっと振り向き、時雨先生に詰め寄る。
「えっ?まだ何ですかっ?ま、まだわたしに隠してる、言えないことがあるんですかっ」
時雨先生は表情を一切変えることなく、わたしと目を合わせようともしない。
「…………」
「無言は肯定と見なしますよ!秘密があるんですねまだ!教えてくださいよ!」
食らいつくわたしを他所に、時雨先生は腰を上げる。
「……もう仕事終わりだな、お疲れ……」
「え……ちょっと!ねえ、何ですかっ?何なんですかッ?」
わたしは慌てて時雨先生を追いかける。
「待って下さいってばあ!ちょっとお!」
必死に追いすがるわたしの声がむなしく響いた。