第32章 妬みはその身の仇
わたしはにこっと笑顔で受け流し、
「そんな怖い顔もなしにしましょ」
時雨先生の無防備な脇腹に両手をやった。
そのまま手をわきわきと素早く細かく動かし、くすぐりまわす。
肌の上で軽くたたくように、指先をめり込ませるように。
手を細かくのたうらせる度、時雨先生は拘束された手足をよじり、身体を激しく揺らす。
「ぅうううッああああ!ふはッ!あ!丸木戸ッ……!ぅ、はあぁ!」
「笑った顔も可愛いですからね」
「んうううぅ……!なに、寝ぼけた、ことッ!っはあ!はははは……!」
✱
「ちょっと休憩しましょっか」
わたしは肩で息をする時雨先生に笑いかけ、自分の椅子に腰かけた。
「っはぁ……はあ……」
時雨先生は散々もだえ苦しみ、全身をしっとりと汗で濡らしている。
憔悴しきった顔、不自然に紅潮した肌が扇情的で、唾を飲む。
休憩、と銘打ったが、そうではない。
わたしはメイクポーチに手を伸ばし、中を探りながら時雨先生に顔を向けた。