第32章 妬みはその身の仇
食い気味に否定する時雨先生を受け流し、喋り続ける。
「でも実際怒ってるじゃないですか、ずっとむすっとした顔して、隙あらば煙草を吸いに退室しようとして」
「いつもだろ」
「そうですね……」
わたしは一度納得し、
「ってそうじゃないですよ!」
声を大きくした。
「わかるでしょう、わたしの言ってること、時雨先生のいつものそれとは全然」
「わかんない」
時雨先生は頑として首を縦に振ろうとしない。
「……もう!」
わたしは頬を膨らませ、もう一度時雨先生に向き直った。
「……失礼を承知で言いますけど、時雨先生もわたしにお説教できる立場じゃないですよね」
時雨先生が画面から目を逸らす。
わたしに顔を向け、怠そうに背もたれに凭れた。
「まあ……斗真も俺がやってるとこに鉢合わせたこともあるし……」
わたしは軽く顔を顰め、浅く頷く。
「……そう、でしょう?時雨先生の気持ちも分かりますけど、そういう態度を取られたら仕事がやりにくいじゃないですか、私情は抜きにいきましょうよ」
「…………」