第32章 妬みはその身の仇
わたしは横目で時雨先生を盗み見た。
さほどおいしくもなさそうにわたしの用意したコーヒーを飲み、仏頂面でキーボードを叩いている。
黙々と、淡々と、先ほどからずっと無言で仕事に打ち込んでいる。
つられてわたしも静かになる。
したがって、二人しかいない保健室には静寂が満ちる。
先日の斗真先生との一件を目撃されてから、数日程経つが終始この調子だ。
わたしはたまりかねて、口を開いた。
「時雨先生、時雨先生ー」
時雨先生はこちらを見ようともせず、更に背を丸める。
「……何?何だよ、さっきから……」
視線を感じていたのか、うんざりした様に言う。
わたしは身を乗り出し、時雨先生をじっと見る。
「まだ怒ってるんですか、この前のこと」
「怒ってない」