第31章 猫に鰹節
時雨は顔を顰め、おれから後ずさる。
『何、その……え、俺に恥ずかしがってんの?きっもちわるっ……』
おれは慌てて言い返す。
『いや時雨に恥ずかしがってるとかじゃないけど!そ、それに時雨もおれの裸見たくないだろ!?』
『見たくねえよ!』
おれは声を張って、押し通す。
『とにかくさ、着替え終わったら呼ぶから!悪いけどちょっとだけ、頼む!』
『なんなんだよ、お前……一応おれ仕事中なんだから、そもそも雑談なら休みの日に言えっつの……』
時雨はぶつくさと文句を言いながら出ていった。
おれは時雨が保健室の外に出たことを確認し、濡れた服に手をかけた。
✱
「そ、そのですね……えっと……あの……おれ、時雨に!ちょっと用事があって来たんすよ!」
斗真先生はあわあわしながら、わたしに懸命に弁解する。
その時雨先生はいないんですか、の言葉を飲み込む。
わたしはとりあえず頷いた。