第31章 猫に鰹節
『時雨ならそういうことにも詳しいかなって……その……』
『うん……まあ……な……』
自然と手に力が入る。
おれは手にしたスポーツドリンクのペットボトルを握りしめた。
『やっぱり彼女が好きなことなら何でも尊重したいし、おれも予めついていけるようにした』
『…………』
その時カシャカシャとしたビニールの音が耳に届いた。
目を上げると、いつになく不機嫌そうに煙草に火をつけようとしている時雨の姿が目に入る。
『おいっ……!』
おれは慌てて腰を上げ、
『うわッ!』
持っていたスポーツドリンクを膝の上にばらまいた。
床に垂れ落ちなかった代わりにおれの服は上下共にびしょ濡れになっている。