第31章 猫に鰹節
『そのっ……それで、彼女がなんて言うんだろ、S、って感じ、で……』
『へ……』
時雨の眉が僅かに上向きに跳ね、特徴的な三白眼が見開いた。
『……時雨?どうした?』
『はっ?え、何、別に、聞いてるけど……』
『そっか。そんで、彼女、男をいじめるのが好き、なのかな、好きなんだろうな……』
『…………』
時雨の人差し指が徐々に揺れ始め、机の上でリズムを刻み始めた。
コツコツと軽い音がするも、おれの頭は丸木戸先生でいっぱいで耳に届かない。
『その、おれあんまり経験ない、って言うか、そういうのに疎かったからさ』
『ああ、うん……そう……』
時雨の足先が床の上でパタパタと上下に跳ね回っている。