第31章 猫に鰹節
『いやっ!むしろその方が都合がいい、っていうか……』
おれは頭を掻き、改めて時雨の顔を見る。
『時雨、今いい?』
時雨は胡散臭そうにおれを一瞥し、怠そうに頷いた。
『……まあ、いいけど……』
マウスから手を離し、背もたれから上半身を起こす。
猫のように背を丸め、デスクに肘を突く。
『悪い、サンキュな』
おれは軽く礼を言い、時雨に缶コーヒーをポンと放り投げた。
時雨は軽々とキャッチし、
『どーも……』
どうでも良さそうな声で呟く。
デスクの傍らに置き、おれに向き直った。
おれも生徒用の椅子に座る。
自分用に買ったスポーツドリンクの栓を開け、気まずい雰囲気を誤魔化すように口をつけた。
時雨の訝しげな視線を感じる。