第5章 逢うは別れの始め
斗真先生は目を伏せ、
「でも、時雨は良い奴なんすよ……けど、いやその!丸木戸先生が悪いとか言ってる訳じゃなくて、そのッ」
唇を噛んだ。
「おれもう訳分かんねえんすよ」
声は僅かに震えている。
「……丸木戸先生は、今までの女の先生とは違うと思ったんす」
「…………」
「永夢とか、聖とか。みんなおれの可愛い生徒なんすけど、なにせ女っ気がない学校にいるせいかそういう揉め事が多くて」
顔見知りの名前が次々と登場する。
この学園の人は食わせ者ばっかりだ……。
「女の先生も、それに乗っちゃったり、して」
なるほど、と納得する。
すべての話が繋がった。
もしわたしが、あの時あの瞬間、違う行動をしていたら?
そう思うとぶるっと震える。
斗真先生はわたしをちらりと見る。
「丸木戸先生は確かに違ったんすけど」
憂鬱そうに表情を曇らせた。
「時雨と……」
斗真先生の表情が陰り、口を噤む。
堂々巡りの独白に嫌気がさしていたわたしは、
「斗真先生はわたしになんて言って欲しいんですか?」
口を挟んだ。
斗真先生の表情が固まる。
「え」
わたしは微笑んだまま、矢継ぎ早に続ける。
「わたしは時雨先生に脅されてます?わたしが時雨先生を脅してます?それとも二人は付き合ってます?」
斗真先生を見据え、静かに睨んだ。
「そんなの、どうでも良くないですか」