第5章 逢うは別れの始め
保健室に出勤する途中、前を歩く先生に目が止まった。
目の前の彼は体操や陸上に使うであろう用具を一人で運んでいる。
わたしは早足に近寄りその背に声をかけた。
「斗真先生!」
「え?」
振り向いた斗真先生に笑いかける。
「ッ、丸木戸、先生……」
斗真先生の顔が引き攣った、気がした。
わたしは特に気にすることなくそのまま隣に駆け寄る。
「手伝いますよ、どこまでですか?」
斗真先生はビクンと肩を跳ねさせ、ブンブンと首を横に振った。
「いや、おれ一人でも別に!いけますから!」
露骨な拒否反応にぽかんとしていると、斗真先生はバランスを崩した。
「全ぜえええッ!」
「わっ!」
わたしは斗真先生の絶叫と共に投げ出される荷物をキャッチした。
「すすすすみません!おれ、あの!」
慌てふためく斗真先生。
わたしは苦笑する。
「どこまでですか?一緒に行きましょ」
「す、すみません……ありがとうございます、体育館倉庫、までっす」
その返事に笑んで頷く。
二人並んで歩き出した。