第29章 藪をつついて蛇を出す
「確かに一ノ瀬くんは少し我慢が苦手みたいですよね」
わたしは素っ気なく言い、
「んんッ……んぅ、ふっ、んっ」
口枷を着けたサヘルくんに笑いかける。
サヘルくんはボールを噛んだ口端から、言葉にならない声を洩らす。
「うッ、んん……!」
サヘルくんは口枷を噛み締め、わたしに必死に目で訴えかける。
潤んだ瞳はわたしに戸惑いを伝える。
サヘルくんの切なげな形相に熱い息を飲み込む。
下腹部に熱が散り、全身がぞくぞくとしてくる。
サヘルくんは息苦しそうに胸を波打たせる。
呼吸の間隔は短く、浅く、
「ふ、ふッ、はぁっ……ぅ」
蠱惑的な程に熱っぽい。
前髪から覗く片目は涙にしとり、薄い目元は赤く色づいている。
口枷の息苦しさが、呼吸を制御される焦りが、サヘルくんの被虐色情に甘い刺激を与える。
「ふーっ……ぅ、んん……」
現にサヘルくんは興奮気味に、ゆっくりと薄い胸筋を上下している。
それが手に取るように分かり、わたしの口元は緩やかに弧を描く。