第29章 藪をつついて蛇を出す
「でも、なんで早漏を治したいんですか?彼女に何か言われた経験があるとか」
「つ、付き合ってる人なんてずっといませんっ」
サヘルは早口に否定する。
その声は僅かに熱っぽい。
自分の恥ずかしい部分を暴かれる昂奮と悦に浸ったような。
鼓動が早まる。
丸木戸がサヘルと……。
他の男を攻める情景が頭の中に浮かんで、肌がぞわつく。
初めて丸木戸の嗜虐的な一面を見た時、あの時も俺はカメラ越しで。
理想の女性が俺以外に目を向けて、与える姿に焦がれて、羨望と嫉妬が胸を渦巻いて。
堪らない興奮を覚えていた。
口端が上がり、激しく胸を打つ心臓を押さえる。
サヘルは間隔をあけて、呟いた。
「紗都せんせいに、ぼくでもっと遊んで欲しいから……」
全身に鳥肌が立った。
「わたしは全然気にしませんけど……」
丸木戸の言葉を待ちながら、荒くなっていく息遣いを感じる。
本能に任せた欲望と独占欲に裏付けられた切望。
様々な願望に支配された生々しい感覚で胸が詰まりそうだ。
「サヘルくん、放課後時間ありますか?」
「はッはいっ!」
俺は生唾を呑む。
錯綜した期待が俺の全身を包み込んでいた。
✱