第26章 三十六計逃げるに如かず
そわそわと落ち着かない様子の斗真先生。
縮こまって座っている。
わたしはその姿を見ながら、ほろ酔いで台所に立つ。
コップを二つ取り適当な飲み物を注ぐ。
お盆に乗せて、斗真先生の隣に座った。
「どうしたんですか、緊張してます?」
「は……はい……」
「どうぞ」
斗真先生にコップを手渡す。
「ありがとうございます」
斗真先生が喉に流すのを横目に、わたしも口をつける。
甘ったるい果物が混ざったような味わいが口に広がる。
何だっけ、これ。
確か貰い物の……。
記憶を辿ろうとした時、
「美味しいっすね、これ」
「そう、ですね……」
わたしは斗真先生に合わせて相槌を打つ。
ごくりと飲み干し、息を吐く。
頭がぽーっとして、顔が熱い。
「そうだ……お酒が抜けるまで、暇潰しに何かして遊びましょっか」
「あー、いいっすねぇ……」
わたしは棚を開け、中からパドルを取り出した。
平たい板が先端部分についた、短い棒状の鞭。
片手に握り、わたしはニコッと微笑む。
「お馬さんごっこしましょ?」