第23章 酒は詩を釣る針
「それじゃあ、少しだけ待っててくださいね」
時雨先生がぎょっとした顔で、枷をガチャガチャと揺らす。
「えっ、待っ……?丸木戸、ちょっ!」
「そんなに心配しなくても戻ってきますよ、ちゃんと鍵も掛けますし」
わたしは指先でチャラッと視聴覚室の鍵を回し、
「……わたしがいない間の暇潰しに、そこのテレビでも見ててくださいね」
保健室の映像が表示されたテレビを指し示した。
先程まで誰もいなかったそこに、永夢くんと聖くんが入って来る。
『失礼しまーす!あれ、紗都せんせー……いないけど、どーしたんだろ』
『先生のことだしもうすぐ来るだろ。永夢、待ってよう』
『うん。……ほんと聖ちんせんせーのことだけは信頼してるよね〜』
『なんでそうなるんだよ!僕は一般論としてっ』
ぎゃんぎゃんと声を荒らげる聖くんと、慣れた様子で受け流す永夢くん。
食い入るように画面を見る時雨先生を置いて、わたしは視聴覚室を後にした。
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