第23章 酒は詩を釣る針
「……これでいいのかな」
独り言を呟き、首を傾げる。
「きちんと隠れてるよ、ね?ちゃんと映るかな……多分時雨先生に聞くと早いんだろうけど……」
わたしはブツブツと声を洩らしながら、放課後の保健室を出た。
学園の地図を思い浮かべながら、廊下を歩く。
「次は……」
✱
「丸木戸も休日まで学園なんて結構な事だな……ご苦労様……」
やってきた時雨先生がわたしを皮肉る。
わたしは破顔して、軽口を叩いた。
「それに付き合ってくれる時雨先生もそうでしょ」
時雨先生は怠そうに頭を搔き、
「っつーか、なんで」
怪訝そうに辺りを見回す。
天上から吊るされたテレビが特徴的な教室。
本来真正面に設置されている大型スクリーンは故障の為に入れ替えするらしく、今は無い。
それに合わせて椅子や机も運び出されている。
また、その為に視聴覚室は生徒立ち入り禁止。
つまり、わたしにとっては格好の場所だったのだ。
テレビ以外何も無い、無人教室……。
わたしは密かに唾を飲んだ。
時雨先生は訝しげにわたしを見つめる。
「視聴覚室なんかに呼んだわけ……」
「すぐに分かりますよ」
わたしは軽く受け流し、視聴覚室の備品のリモコンを手に取る。
テレビの電源を付けた。