第22章 亭主の好きな赤烏帽子
わたしはマウスホイールを転がす。
パソコンをスクロールし、ほうっと吐息を衝いた。
画面に表示されているのは、ランジェリーショップの通販サイト。
ラグジュアリーなショーツ、透け感が可愛いキャミソール、レースのあしらわれたブラジャー。
見惚れていると、
「失礼します……」
背後の保健室の扉が開いた。
「んわぁッ!」
わたしは間の抜けた声を上げ、椅子の上で飛び上がった。
慌ててサイトを閉じようと、四苦八苦する。
「す、すみません!今伺います……っ!」
「ご……ごめんなさい、お邪魔、しましたか……」
後ろから聞こえるか細い声。
わたしはブンブンと首を左右し、サイトを閉じた。
「いえいえっ全然!全然大丈夫ですから……!」
時雨先生じゃなくて良かった、と内心胸を撫で下ろす。
取り繕った笑顔を浮かべ、後ろを振り返った。
「どうした、の、って、サヘルくん」
わたしの視線の先に立っていたサヘルくん。
その表情はぼんやりして、目線も虚空をさ迷っている。