第21章 高嶺の花
永夢くんは先程までの雰囲気とは打って変わって、興味深そうに斗真先生の顔を覗き込む。
永夢くんはヘラッと笑った。
可笑しそうに肩を揺らす。
「へー……そっか、斗真ちんも目覚めちゃった系か……」
永夢くんは興味津々な様子で
斗真先生をじっと見つめ、質問を重ねる。
「じゃあオレともそーいうことしてるのは?」
「そ、それは……今、知った……」
「もしかしてー、斗真ちんも経験済み?」
斗真先生の耳まで赤く染まる。
永夢くんは眉尻を下げ、困ったように笑った。
「わかりやすいな〜」
わたしは場に流れる不穏な空気を肌で感じ取る。
さりげなく椅子から腰を上げた。
「あ……あの、そろそろわたし保健室に……」
生徒指導室から出ようと忍び足で歩き出す。
「なんかーオレ具合悪いなあ、頭痛い〜」
背後から永夢くんの棒読みな声がした。
恐る恐る振り向くと、
「……え?」
永夢くんがわたしの腕に絡みついた。
「わあッ!」
驚きを顕にするわたしに、永夢くんはにこっと歯を見せる。
「だからせんせーと一緒に保健室行く」
「えっ、ええっ!え!?」
押し切られる形で連れ立って歩き始めた時、もう片方の腕を握られた。
わたしは吃驚して、わたしの手を取った彼を見る。
斗真先生が真剣な、緊張混じりの目で呟いた。
「……おれも行きます」
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