第21章 高嶺の花
永夢くんは笑顔のまま淡々と話す。
「学校まで来るのとかさあ、オレそういうの好きじゃないって言ったじゃん?なんで守ってくんない訳、オレだって意味分かんないよ?」
永夢くんとわたし、彼女の騒ぎに周りの人達の視線が降り注ぐ。
彼女は耐えかねたのか、黙ってわたしを見る。
「この人?ねえ、この人がいるからもう会ってくんないの?」
「……オレにどーしてほしいの?」
永夢くんのその言葉で、彼女の目から光が消える。
「…………」
彼女は素早く制服のポケットに手を回した。
「何やってるんだ!」
その時、彼女を制した声。
焦った表情の斗真先生が立っていた。
斗真先生はわたしを見、時雨くんを見、彼女に目線を戻す。
先程の様子とは打って変わって、落ち着いた声で彼女に話しかける。
「……君、ここは冴舞学園の敷地内なんだよ。勝手に入っちゃいけない」
斗真先生はまっすぐに彼女を見つめ、至って冷静に話す。
「君の都合も分かるんだ、でも、あんまり騒がれたら学校や家庭に連絡入れないといけなくなる。君も困るだろ?」
彼女はこくんと小さく頷いた。
斗真先生は優しい笑みを浮かべ、野次馬になっている女の子達を見回す。
「他の子達も……今のうちにこういう事を辞めてもらわないと然るべき対応をさせてもらわないといけなくなる」
斗真先生の発言に女の子達は散り散りになり、1人、また1人と消えていく。
やがて誰一人としていなくなっていた。
永夢くんとわたしは、おお〜っ……と間の抜けた声を漏らす。
「永夢、来い!」
「えっ」
斗真先生が時雨くんの襟首を掴んだ。
そのまま学園内へと引き摺っていく。
「お前はいつもいつもいつも……!」
「え、ちょいちょいちょい!斗真ちんってえ!」
わたしは慌てて二人を追った。
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