第21章 高嶺の花
「紗都せんせー」
後ろから駆け寄ってきた永夢くんがわたしに声をかける。
わたしは抱えきれない程のプレゼントを落とさないようにと、慎重に頭を下げた。
「おはよう、永夢くん」
永夢くんはわたしの手元に目をやり、苦笑いする。
すっかり手慣れた様子で、わたしの手からプレゼントを掠め取った。
わたしも慣れたもので、有難く手伝ってもらう。
「ありがとうございます、あ、それとあれとこれは永夢くん宛なのでどうぞ」
永夢くんは平坦な声で、
「わーありがとー……」
如何にも杓子定規なお礼を言う。
「ほんとお人好しだねえせんせー」
「そんなつもりじゃないんですけど……」
玄関に入ろうとした時、
「えわッ!」
首根っこを持たれた。
慌てて背後を振り返ると見ず知らずの女の子が立っている。
無表情に、わたしには目もくれず永夢くんを見つめている。
「……永夢、誰なのこいつ」
永夢くんはにこっと笑い、彼女の手をわたしから振り解く。
さりげなく彼女の前に立ちはだかる。
「誰って何?こいつとかやめよ、ふつーにオレの学校のせんせーだから。マジでどうしたの?」
「こっちのセリフなんだけど……!なんで連絡くれないの?なんで会ってくれないの?まじ意味分かんないんだけど……」
わたしは固まった。
……もしかして修羅場に巻き込まれたのではないのだろうか。