第20章 悪事千里を走る
わたしは時雨先生から背を向け、玩具からコンドームを外す。
「……丸木戸」
「え」
のたのたと後始末をしていると、後ろから抱き竦められた。
熱帯びた腕がわたしの身体に絡む。
時雨先生のタバコの臭い、身体の匂い。
わたしはそっと背中を任せた。
「丸木戸……好き」
どくっと心臓が跳ねて、わたしは照れ笑いした。
「ま……まあわたしも、実際、好きですよ、その……時雨先生を、虐めるの」
「…………」
瞬間、後ろからちゅっと耳朶を食まれた。
「ひっあ!」
背筋がぞわつき、甘ったるい感覚にわたしは身悶えする。
ちゅ、ちゅ、と柔らかく連続して甘噛みのようなキスが落ちる。
時雨先生の手を慌てて振りほどき、飛び退く。
「な、何ですか、急に、ちょっと!」
振り返ると、時雨先生は飄々とした顔で服を着ている。
呆然とするわたしに不貞腐れたような、呆れたような目を向け、だるそうにベッドを下りる。
ライターとタバコのセットを掴み、靴を履いた。
「一服してくる」
「……もう!」
わたしはぷうっと頬を膨らませ、口を尖らせた。