第20章 悪事千里を走る
「……聞くまでもないですね」
時雨先生の小さな黒目が動いて、わたしを縋るように見つめた。
唆る表情に下腹が熱くなり、どうしようもなく高まる。
無意識に吐息を零した。
わたしは自分に似つかわしくないモノを愛おしげに撫で、固定具を外す。
自分のデスクにペニスバンドを置いた。
時雨先生に小首を傾け、口角を上げる。
「もう二度とおいたする気が起きないくらい、犯してあげますから」
✱
わたしはベッドに仰向けになった時雨先生を見下ろす。
固くなった表情、薄い赤に変わった目元。
時雨先生は固く唇を噛み、溢れる吐息を押さえる。
わたしを上向きに見つめた。
緊張の窺える表情が蠱惑的で、わたしの嗜虐心を擽る。
わたしは時雨先生の足元に腰を据え、ぺたんとマットに座り込んだ。
「緊張してますか?」
時雨先生はわたしの問いかけに、困惑した色を浮かべる。
言いよどみ、
「そりゃそうだろ……」
わたしのデスクの上のペニスバンドに目をやる。
仕事道具の中で異彩を放つ、生々しい玩具。