第19章 奇貨居くべし
……持って帰るつもりで、忘れたのか。
届けた方がいいのか……?
時計と置きっぱなしの白衣を見比べ、俺は気だるい腰を上げた。
白衣に手を伸ばし、掴んだ瞬間。
気のせいか丸木戸の温もりが残っている気がして、喉が鳴った。
丸木戸が着ていたという事実が俺を焚きつける。
何気なく持ったそれが堪らなく魅力的で、俺の気を激しくそそった。
唇が興奮で乾き、合わせたかのように鼓動が五月蝿くなる。
俺は手にした白衣を熱っぽい目で見下ろす。
……有り得ねえ、流石に……。
自分に嫌悪感が沸き立つも、身体は熱ってきて、下半身に血が集まる。
俺は保健室の中を一瞥し、鍵をかけた。
白衣を手にしたまた自分の席に座る。
魔が差した。
俺は自分の物より一回り小さな白衣を持ち上げて、
「ん……ッ」
俺は自分の口元に押し付けるようにして息を吸い込んだ。