第18章 隴を得て蜀を望む
僕が鞄を受け取ろうとした時、彼はハッとした表情を見せた。
「あ、忘れていました!聖君宛にお荷物が届いてましたのでお部屋の前に置いております」
僕の心臓が跳ねる。
彼は何も知らずに、当たり前のように丁寧な一礼をする。
僕も至極当然のような顔をして、お礼を言う。
「そうですか、ありがとうございます」
「いえ……お荷物をどうぞ。それでは失礼致します」
逸る気持ちを抑え、彼から鞄を受け取る。
僕の部屋の前に置かれた、内容物を暈したラベルの貼られた小包。
僕はそのダンボール箱を小脇に抱え、自室のドアノブを捻った。
✱
……頭の中にさっきまでの勉強内容がチラつく。
頭がぼんやりする。
復習の手を止め、シャープペンシルを投げ出した。
机の上を片付けながら、家庭教師とのうんざりするようなやり取りを思い返す。
僕は何度も予習した問題を解いて、必死に暗記した公式を何気ない顔で吐き出していた。