第17章 風が吹けば桶屋が儲かる
時雨先生にそっと目線を返す。
時雨先生は嫌そうな面持ちで、だるそうに口を開く。
「ここ、結構有名な男子校だからそういう奴らがいんの……生徒目的で学校前に張り込んで、連絡先聞いたり、付き纏ったりな」
わたしは唇をぎゅっと結ぶ。
両膝に拳を置き、うんうんと話を聞く。
時雨先生はそこでわたしから視線を逸らし、机に頬杖を突いた。
「それで、なんかよく分かんねぇけど俺にも……」
「ちょいちょい来る、という訳ですか」
「……まあ……うん」
時雨先生は興味なさげに話を切った。
わたしはもう一度箱を手に取り麻縄に触れる。
時雨先生に目線を投げ、問いかけた。
「これ、どうするんですか?」
「どう、って……だから……」
時雨先生は長い息を吐き、俯いて表情を隠す。
吐き出すようにボヤいた。
「……俺は、これで丸木戸にキツくして欲しい……」
時雨先生は俯きがちに呟く。
垂れた黒髪から覗く頬は薄赤に染まっている。
「俺を縛って欲しいって思うんだよ……俺は丸木戸に縛られたい……」
望む答えに、わたしの身体はぞくりと痺れる。
足先から昇ってくる快に身を震わせ、
「学生からこんなプレゼント貰っちゃって、しかもそれを他の人に渡して自分に使って欲しいなんて……」
口端を歪ませる。
「悪い人ですね」
わたしは時雨先生を見つめ、自嘲気味に囁いた。
「……ほんとうに、わたし達ってだめな人」
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