第17章 風が吹けば桶屋が儲かる
わたしは丁寧に、ゆっくりと包装紙を剥がしていく。
時雨先生はその様子をつまらなさそうに眺める。
自分の椅子の背もたれに両腕を置き、だるそうに顎を乗せた。
「まだ?」
「まだです」
「おれが開ければ良かった……」
「何か言いました?」
「いや別に……」
わたしはそろそろと箱を開けた。
「こ……これって」
中には、真っ赤に朱染めされた麻縄が入っていた。
わたしは目を白黒させ、眉を顰めた時雨先生を見る。
縄と見比べ、声を絞り出した。
「こ、これで時雨先生を縛りたいってことですか?随分将来有望な」
「その逆な」
時雨先生は食い気味に否定し、同封された愛らしい封筒をわたしに目で示した。
わたしはこくんと頷き、それを開封する。
そこには時雨先生に対する熱い気持ちがおびただしい文量で綴られていた。
自分をこれで縛って欲しい、という願いも。
わたしは静かに便箋を封筒に戻した。