第17章 風が吹けば桶屋が儲かる
いつも通りの朝、わたしは校門を潜ろうと歩いていた。
その時、
「あのっ、冴舞学園の先生ですかっ?」
突然声をかけられた。
男子校に勤め始めてからめっきり聞かなくなった女の子の声。
振り返ると、案の定制服の姿の女の子が立っていた。
冴舞学園の生徒たちと同年代だろうか。
何の用事で来たんだろう、とわたしは少し身構える。
恐る恐る首を縦に振った。
「は、はい」
彼女はその瞬間緊張した表情を緩め、自身のカバンに手を突っ込む。
その中から可愛らしくラッピングされた平たい箱を取り出した。
彼女は顔を赤くし、わたしにおずおずとそれを差し出す。
「そのっ、これっ!時雨先生にお渡ししてもらえませんかっ……」
わたしは一瞬きょとんとし、
「分かりました、ちゃんと渡しておきますね」
笑顔で頷いた。
彼女は気恥しそうに、わたしにプレゼントを託す。
時雨先生も隅に置けないなあ。
わたしはにまっと頬を弛める。
保健室に向かって意気揚々と歩き出した。
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